2026/01/07 12:07
ぼくが小さな子どもだった頃、
大好きだったこの絵本
大人になりパン屋になったとき、もう一度この本を手に入れた
「ぞうのパンやさん」
岸田衿子・文 長新太・絵
ぼくが手に入れたのは1992年版
ぼくが読んでいた本そのものは1970年に発行されたらしい
あかちゃんのための絵本というコンセプトでつくられたこの絵本は
とてもシンプルな構成だ
ぶたの親子がパン屋さんにパンを買いに行く
買うのはぶどうパンとうずまきパン3つ
できたてのパンを袋に入れて渡してくれるのは
おおきなぞうのパンやさん
こぶたは、パンもぞうのパンやさんも大好き
ぼくもこぶたと同じように、小さな時からパンが好きだった
ごはんとパンのどちらかを選ぶなら、迷わずパン
だから初めて食べた「カンパーニュ」というパンの味わいに
味覚が衝撃で貫かれたかと思った
こんなパンが世の中にはあったのか、と
けれど、記憶の海の奥深くにはあのパンが静かに揺らめいていた。
おおきなぞうのパンやさんがこぶたに渡した、あのぶどうパン
あのぶどうパンはきっと、今でいう「レーズン入りのパン」だと思う
給食のパンとしてメニューに存在していたような気がするのだが
はっきりとは思い出せない
息子や娘が義務教育を受けていた時代にレーズンが入ったパンを食べたことがあるか聞いてみたが、どうやらないらしい
ぞうのパンやさんが焼くぶどうパンは、
(多分)干しぶどうが入っていると思う
そのぶどうはパン生地の中に均等に散りばめられていて
どこから食べてもちゃんとぶどうにたどり着けるようになっている
ぼくが焼くレーズン入りの食パンは、
何度焼いてもあのぶどうパンのようにレーズンを散りばめることができなかった
成形に何かあるのか
レーズンの重さでなのか
あるいはまったく別の話なのか…
研究しながら焼き続けてきたけれど
ぞうのパンやさんが手渡すぶどうパンにはついにたどり着けないまま
レーズンのパンはflamme!のメニューから姿を消す
ぞうのパンやさんがぶたの親子にしあわせを届けているように
flamme!としてぼくも、お客さんにしあわせを届けたい
その気持ちはなくなることはないけれど
いつも店頭に並ぶ商品としての役割はなくなる
けれど、ぼくが焼くレーズンパンが大好きな妻のために
ぼくは時々あのパンを焼くだろうな
ナイフを入れ、レーズンがひょこっと顔を出すその断面を見る度にきっと
ぞうのパンやさんの笑顔とあのパンを思い出す
こぶたが抱えるパンの袋から少し顔をのぞかせている
ぶどうのパンを
